#U2 大学有機化学講義
やっほ〜🧪 博士課程有機化学研究生 aIRa (アイラ) です☆
日常に隠れた有機化学の面白さを発信しています。今日もよろしくね!
この記事では、大学教科書『ブルース有機化学』の内容をベースに、現役博士学生の視点でかみ砕いてやさしく解説しています。みんなの「有機化学の参考書」、そして「生活をちょっと豊かにする参考書」になれたら嬉しいです!

トランス脂肪酸と「トランス」の意味
皆さんは「トランス脂肪酸」という言葉を聞いたことがありますか?
フラペチーノの上の生クリームや、朝の食パンに塗るマーガリン。
そうした食品の成分表示に「トランス脂肪酸」と書かれていることがあります。
健康に良い悪いという話題はよく出てきますが、私は有機化学オタクなので、
この「トランス」の意味、面白さを伝えたい!
「トランス」とはアルケン(炭素−炭素二重結合)に由来する立体配置の呼び方です。
トランス脂肪酸がなぜ非自然的だとか言われているのかを理解するために、
今日はこの「アルケンの二重結合」と、その二重結合がどのように反応するのかを一緒に学んでいきましょう。


アルケンとE/Z異性体
アルケンとは炭素と炭素の二重結合 C=C をもつ不飽和炭化水素です。
二重結合は σ結合 と π結合 から成り立っています。
σ結合は軌道が正面で強く重なってできる結合で、安定性が高い。
一方、π結合は横方向の重なりで形成されるため弱く、壊れやすい特徴があります。
この弱いπ電子は束縛がゆるいため反応に参加しやすく、求核剤として働けるのです。
二重結合は回転できないため、置換基の位置関係によって幾何異性体が存在します。
大きい置換基が同じ側なら シス (Z)、反対側なら トランス (E)。
(補足:厳密には CIP順位則 というルールで優先順位を決め、E/Zとして表します。
シス=Z、トランス=Eと一致することが多いですが、必ずしも同じではありません。)
具体例として、植物油に多く含まれる オレイン酸 はシス体 (Z)。
一方、加工によって生成してしまう エライジン酸 はトランス体 (E) です。
食品中の「トランス脂肪酸」と呼ばれるのは、まさにこのエライジン酸のような異性体を指しています。

アルケンはどう反応するのか?
極性反応の基本は「プラスとマイナスが出会って新しい結合を作る」。
• 求電子剤 =電子を欲しがる側、空の軌道、電子不足
(例:H⁺, カルボカチオン, Br₂のσ*軌道など)
• 求核剤 =電子を持って攻撃する側、高エネルギーな電子対
(例:二重結合のπ電子、陰イオン、孤立電子対など)
アルケンが反応する時は、まず π電子が求電子剤を攻撃する ことから始まります。
では、代表的な例として HCl の求電子付加反応を見てみましょう。


ハロゲン化水素 HX 付加の機構
例:trans-3-ヘキセン + HCl → 3-クロロヘキサン
- アルケンのπ電子が H+ を攻撃
→ C–H結合が新しくでき、二重結合が切れて片方の炭素が カルボカチオン になる。(プロトン化) - Cl– がカルボカチオンを攻撃
→ C–Cl結合ができて、ハロゲン化アルキルが生成。
これが「HX付加」の基本的な反応機構です。
まずはこれを理解しましょう。
硫酸酸性での水の付加 (いわゆる水和) も同じ原理で反応が進行するのは、ここまで理解できれば説明不要ですね!!水和が起こるために酸が必要な理由は「カルボカチオンの発生に酸が必要だから」ということです!
さて、教科書を見て理解できてしまう内容は早々に終わらせて!!
ここからが aIRa 流のステップアップ!!


では、カルボアニオン経路はダメなのか?
「Cl–の付加によりカルボアニオンができ、その後に H+ によってプロトン化される」
——そんな反応機構は成立しないのでしょうか?
実は私自身、こうした疑問を持ったのは最近のことです。
研究や後輩への指導を通じて、
「教科書に書かれている機構はどうやって立証されたのか?」
「他の可能性はどう否定されているのか?」
と考えるようになりました。
ここでは少しチャレンジ的に、この「カルボアニオン経路」がなぜ現実的でないのかを
チョーさらっとだけ味見してみましょう。
理由は3つです。
- カルボアニオンは極めて不安定
炭素は電気陰性度が低く、負電荷を安定に持てません。
実際、カルボアニオンは特殊な安定化がないと観測すら困難です。
一方でカルボカチオンは、歴史的にも超酸環境下で単離・解析されています。 - 電子反発の問題
アルケンの二重結合はすでに電子豊富です。
そこに陰イオン(Cl–)が近づこうとするとマイナス同士で押し合って反発。
逆に H+ のような電子不足の種は自然に引き寄せられます。 - 実験事実と合わない
非対称アルケンに対する位置選択性はカルボカチオン経路で説明できますが、
カルボアニオン経路では矛盾してしまいます。
(詳しくは Markovnikov則 についての解説記事で!)
ここで言いたいことは、「別の可能性を立てて、ダメな理由を考える」ことが、機構を理解、研究する上で大切です。
理解できなくても大丈夫。こうした疑問に挑戦する姿勢こそ、次のステップへの一歩になります。
理解できちゃった人、楽しかった人は素晴らしい。ぜひ有機系の研究室へ!

まとめ
• アルケンは電子豊富な二重結合を持つため、求電子剤を攻撃して反応が始まる。
• HX付加は 「アルケン → カルボカチオン → 求核剤付加」 の流れで進む。
• カルボアニオン経路は電子反発や不安定性、実験結果から否定される。
• ぜひ有機化学を楽しみましょう!

最後に
今日も有機化学のお勉強、お疲れ様でした!有機化学反応の第一歩です。
次回は、トランス脂肪酸が実際に発生する機構に関わる「水素添加」を含む、
残りのアルケンの反応について説明していきます。
これからも、私の拙い知識と価値観、有機化学の見方、日常の化学的見方について、
社会への知識の「還元」として活動を続けていきます。
皆さんも情報や電子を受け取りやすいように、参加 (=酸化) 度高めでお待ちください!
次回をお楽しみに!
それでは、またねーーー〜 (๑˃̵ᴗ˂̵)و♡
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